下肢(股関節・膝・足指)の後遺症

下肢とは

下肢のイメージ画像下肢は、股関節、膝関節、足関節の3つの関節で構成されています。股関節から膝関節までを大腿骨という1つの長管骨が繋いでいます。膝関節から足関節までは、脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)の2本の骨が通っています。下肢の後遺障害も上肢と同じく、骨折や脱臼、神経麻痺によって生じます。

下肢の後遺障害は、大きく分けて以下の3つに分類できます。

欠損障害

下肢の一定部分を失うこと

機能障害

関節の動きが悪化し、可動域制限などの機能不全が生じること

変形障害

骨折した部分が正常に接続していないこと

 

 

等級一覧

下肢について、後遺障害認定基準では以下のものが規定されています。

下肢の後遺障害等級別グラフ

 

下肢(股関節・膝・足指)の主な傷病

股関節唇損傷

股関節唇損傷について詳しくはこちらをご覧ください。

 

骨盤骨折(恥骨骨折、坐骨骨折等)

骨盤は左右の恥骨、坐骨、腸骨と仙骨から構成されています。骨盤輪の中には直腸や肛門、膀胱といった内臓があり、女性の場合には、子宮や卵巣など重要な器官がこの位置にあります。

したがって、骨盤骨折の場合、骨折による痛みや下肢の運動障害はもちろん、臓器の損傷にも気をつけなければなりません。内腸骨動脈損傷による出血性ショックには特に注意が必要で、最悪の場合死亡するケースもあります。

骨盤骨折はレントゲンで判断可能ですが、仙骨や仙腸関節の離解はCTで確認することもあります。

 

股関節脱臼・骨折

自動車に乗車中に事故に遭うと、ダッシュボードに膝を打ち付けることで、大腿骨が後方にずれ、股関節の脱臼を生じることがあります。脱臼に骨折も伴っている場合、骨片が坐骨神経を圧迫し、坐骨神経麻痺を併発することもあります。

関節の脱臼により、脱臼部分の痛みや腫れ、可動域制限が発生しますが、関節の機能制限として12級7号に該当する可能性があります。

 

大腿骨頭壊死(だいたいこつとうえし)

大腿骨頭は3本の血管により栄養を受けていますが、上に述べた脱臼によりこの血管を損傷すると大腿骨頭に必要な栄養が送られずに壊死してしまいます。これを防ぐためには、24時間以内に整復し、位置を戻す必要があります。処置が遅れると、壊死した骨頭を切断し、人工骨頭を埋め込むことになります。後遺障害との関係では、10級11号に該当する場合があります。

 

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

変形性股関節症とは、股関節を構成している臼蓋(きゅうがい)と大腿骨頭の接触面の軟骨がすり減るなどして変形した状態を言います。交通事故との関係では、事故により血流が悪くなった場合に、生じる可能性があります。

 

大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)

大腿骨の頸部とは、骨頭に続く部分で内側は股関節の内部にあります。この部分は、この部分は血行が不良などの理由から治療が難しいとされています。痛みはもちろん、股関節の可動域制限を生じるケースが多く、関節の機能制限として12級7号に該当する可能性があります。

 

大腿骨転子部骨折(だいたいこつてんしぶこっせつ)

転子部とは、頸部に引き続く部分で頸部の内側に比べると血流も多い部分なので、骨癒合も多くのケースでは早く進みます。

 

大腿骨骨幹部(だいたいこつこつかんぶこっせつ)

骨幹部とは、大腿骨の中央部分に該当する部分をさします。この部分の骨折は交通事故の際には、多く生じます。

治療法としては、キルシュナー髄内釘やAOプレートを使用して固定します。

この部分の骨折では、転位が大きく、骨癒合がうまくできずに偽関節を残すことがあります。その場合には、8級9号が認定されることになります。

 

脛骨顆部骨折(けいこつかぶこっせつ)、高原骨折、プラトー骨折

脛骨とは大腿骨とつながる腓骨とともに膝から下を構成している骨で、すね(弁慶の泣き所)があるのもこの骨です。この部分の骨折は、膝に衝撃が加わった際に発症する骨折です。この傷病とあわせて、膝蓋骨折や膝の靭帯損傷を併発することが多いのが特徴です。レントゲンで診断可能です。

脛骨顆部は海綿状の骨なので、欠損部には骨移植が必要となります。すでに述べたように膝関節に影響を与えますので、関節の機能障害として10級11号や12級7号が認定される可能性があります。

 

膝蓋骨骨折(しつがいこつこっせつ)

膝蓋骨とは膝の皿の部分のことです。交通事故の際、衝突の衝撃で膝をダッシュボードやバンパーなどにぶつけたり、飛ばされて地面に膝を強打した場合などに骨折する可能性があります。膝関節の可動域制限を伴う骨折となることも多く、機能障害として後遺障害に該当するケースも出てきます。

 

半月板損傷

大腿骨と脛骨の間にあるクッションの役目をする組織を半月板といいます。この傷病については、聞いたことのある方も多いと思います。医学的には、細胞外線維性基質という軟骨の一種です。

この部分の損傷を確認するテストとしては、仰向けの状態で膝を曲げた上で足を動かした際にグキグキという異常音がなるかどうかというマクマレー・テストやグリンディング・テストを行います。その他に、半月板の損傷はMRI検査が有効です。

治療法としては、温熱療法、患部へのステロイド注射、痛み止めや消炎鎮痛剤の内服といった保存療法と損傷した半月板の縫合もしくは切除という手術療法が考えられます。手術をした場合には、縫合であれば6週間、切除であれば2週間ほどの安静が必要です。

 

前十字靭帯損傷(ACL損傷)

膝には、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4つの靭帯があります。内外側側副靭帯は上下の骨が左右にずれるのを防ぎ、前・後十字靭帯は前後にずれるのを防いでいます。

スポーツ選手がこの靭帯を損傷するケースがありますが、交通事故においては、バイクや自転車などの事故で多く発生しています。断裂することが多く、その際ブチッという音がなります。

損傷については、ラックマンテストを行って判断します。また、ストレス(圧力)をかけると、前十字靭帯が損傷している場合には脛骨が前方に飛び出ますので、それをレントゲンで撮影することで、損傷の程度を診察します。

靭帯の再建手術を受けた場合、8~12か月のリハビリが必要となります。

損傷の程度が激しく、膝関節に動揺性が認められ、常時装具の必要性があるような場合には、関節の用廃として8級7号が認定されます。

膝十字靭帯損傷について詳しくはこちらをご覧ください

 

内側側副靭帯損傷(MCL損傷)

内外の側副靭帯のうち、損傷が多いのは、内側の側副靭帯です。外側からの強い圧力がかかった場合、これに耐え切れずに内側側副靭帯が切れることがあります。サッカーやラグビーなどのスポーツで発症するケースが多いですが、交通事故でも衝突による外側からの強い衝撃が原因で発症します。

膝十字靭帯損傷について詳しくはこちらをご覧ください

 

複合靭帯損傷

交通事故において、衝突の強い力が膝に集中した場合には、膝の2つ以上の靭帯を損傷することがあります。この場合、一つの靭帯に比べて、膝は不安定になり、重度の後遺障害を生じるおそれがあります。すなわち、膝の用廃として8級7号に該当する可能性があります。

膝十字靭帯損傷について詳しくはこちらをご覧ください

 

腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)

腓骨神経は膝の外側を通り、腓骨の側面から足関節、足指まで通っています。腓骨神経は足関節と足指の可動に影響をもっていますので、この部分に麻痺が生じると、自力で足首を曲げることができなくなり、下に垂れ下がった状態となります。日常生活においては、靴下をうまく履けなかったり、スリッパが脱げてしまったり、正座や和式トイレの使用ができなくなったりします。足関節の用廃と足指の用廃として後遺障害等級で7級相当とされることもあります。

 

距骨骨折(きょこつこっせつ)

距骨は、踵骨と脛骨の間に挟まれている骨で足首の下付近にあります。交通事故においては、バイクから運転中の事故により転倒した際に、脛骨と踵骨に圧迫されて骨折することが多いです。距骨を骨折してしまうと、激痛を伴い、立つこともままなりません。当該部分の骨折は足関節の機能障害をもたらし、10級11号に該当する可能性があります。