高次脳機能障害(遷延性意識障害)

高次脳機能障害(遷延性意識障害)とは

高次脳機能交通事故により、脳に損傷を受けた場合、事故前と比較して人格や性格に変化が生じたり、記憶力の低下といった異常を来し、働くことができず、日常生活でも支障が生じることがあります。

このような、外見上は回復していると考えられるにもかかわらず、認知障害や行動障害、人格変化といった症状が生じ、社会生活を正常に営むことが困難な状態になることを高次脳機能障害(遷延性意識障害)といいます。高次脳機能障害は、近年において注目されるようになった後遺障害です。

 

高次脳機能障害(遷延性意識障害)の後遺障害等級一覧

高次脳機能障害(遷延性意識障害)に関しては、別表第1の1級から別表第2の9級といったところで認定されています。症状が軽微な場合は、12級や14級に該当すると判断されるケースもあります。

高次脳機能障害の後遺障害等級別グラフ

高次脳機能障害(遷延性意識障害)については、上記の基準の認定に当たって、補足的な考え方という指針が設けられており、実務上用いられています。

高次脳機能障害の後遺障害等級別グラフ

高次脳機能障害(遷延性意識障害)の特徴

①認知障害や行動障害、人格変化といった典型的な症状

Print高次脳機能障害(遷延性意識障害)では、記憶力や注意力・集中力といった能力に問題を生じる認知障害をはじめ、周囲の状況に応じた行動ができないという行動障害、事故前と比べて、自己中心的になったり、変なこだわりを持ったり、意固地になったりという人格変化といった症状が起こります。

②脳外傷によるびまん性脳損傷を原因とする

高次脳機能障害(遷延性意識障害)は、交通事故の際に頭を地面に強く打ちつけてしまった場合のように、脳に外傷を負った際のびまん性脳損傷を主な原因として生じます。

③社会生活を営むことが困難になる(生活能力の低下)

高次脳機能障害(遷延性意識障害)により①の各種症状が現れた場合、就労や日常生活に支障を来し、社会生活を営むことが難しくなり、重いケースの場合には、介護が常に必要になることもあるのです。

④見落としがちな障害

高次脳機能障害(遷延性意識障害)は、外見上回復していると見えるため、医師によっても適切に診断されず、見落とされてしまうこともある症状です。

 

 

高次脳機能障害(遷延性意識障害)認定のポイント

MRI画像交通事故による高次脳機能障害の認定に当たっては、①交通事故による外傷で脳に損傷を受けたことが画像資料により明らかであること(因果関係、画像所見)、②意識障害の有無と程度、③事故前との異常傾向の程度がポイントとなります。

まず、交通事故との高次機能障害(遷延性意識障害)との因果関係の観点と高次脳機能障害(遷延性意識障害)と認められるかという2つの観点から、高次脳機能障害(遷延性意識障害)においては、画像所見が極めて重要です。

認定に当たっては、脳にびまん性脳室拡大や、脳萎縮の症状といった器質的な変化が生じている必要があります。これを判断するのが、CTやMRIといった画像所見です。

したがって、頭部に外傷を負った場合には、事故後の早い段階でCTやMRIの撮影を行っておくべきです。

次に、高次機能障害(遷延性意識障害)は頭部の傷害により意識障害が生じた場合に発生しやすいと言われています。したがって、意識障害の有無、意識障害があった場合には、その時間や程度を適切に把握しておくことが重要です。そして、当該意識障害について、きちんと後遺症診断書やカルテに記載してもらっておかなければなりません。第三者である損害保険料率算出機構が判断するに当たっては、医師のカルテや診断書といった客観的な資料が大切であることはお分かりだと思います。

最後に、先ほどの説明した高次脳機能障害(遷延性意識障害)の症状が生じていることも必要です。これを立証するためには、主治医の診断はもちろんですが、家族や介護者といった身の回りの人から得られる日常生活の情報が有用です。何かあったときには忘れずにその都度メモを取って、主治医に相談しておくことが大切です。

 

 

高次脳機能障害(遷延性意識障害)の判断基準

調査のイメージ画像

交通事故による高次脳機能障害は、通常の後遺障害の認定手続と異なり、慎重な判断が求められるため、高次脳機能障害を取り扱う専門部での審査となります。
以下、高次脳機能障害の審査対象となる事案についてご説明します。

 

自賠責保険で高次脳機能障害事案として審査対象となる事案

診断医が高次脳機能障害または脳の器質的損傷の診断をおこなっている場合

医師のイラスト

後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状が認められる場合には、後遺障害診断書および神経系統の障害に関する医学的意見書が必要になります。

この場合は全件が審査の対象になり、全件、高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査をおこないます。

 

診断医が上記診断をおこなっていない場合であっても該当する事案

後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する症状が認められない場合などでも、以下の①~⑤のいずれかに該当すれば高次脳機能障害が認められる場合があります。

こちらは頭部外傷に関して、後遺障害診断書が発行されない状態で、自賠責保険の請求がなされている被害者を救済することを主旨としているものです。

高次脳機能障害(または脳の器質的損傷)の診断がおこなわれていないとしても、この傷病が見落とされる可能性があるため、慎重に調査をするとされています。

具体的には、原則として被害者本人の家族に対して、脳外傷による高次脳機能障害の症状が残存しているか否かの確認をおこない(日常生活状況報告書)、その結果、高次脳機能障害の症状が認められる場合には、高次脳機能障害に関する調査を実施の上で、自賠責保険(共済)審査会において審査をおこないます。

①初診時に頭部外傷があり、経過の診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷1、びまん性損傷の診断がなされている症例

②初診時に頭部外傷の診断があり、経過の診断書において、認知・行動・情緒障害を示唆する具体的な症状、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経系統の障害が認められる症例

具体的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。

認知低下、思考・判断力低下、記憶障害、記銘障害、見当識障害、注意力低下、

発動性低下、抑制低下、自発性低下、気力低下、衝動性、易怒性、自己中心性

③経過診断書において、初診時の頭部画像所見として頭蓋内病変が記述されている症例

④初診時に頭部外傷があり、初診病院の診断書において、当初の意識障害(半昏~昏睡で開眼・応答しない状態:JCS2が3~2桁、GCS3が12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点)がすくなくとも1週間以上続いていると確認できる症例

(頭部外傷後の意識障害についての所見)

⑤その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

 

症状固定時期の考え方(小児・高齢者の場合の留意)

成人被害者の場合

通常は受傷後1年以上を経てから症状固定が妥当とされています。

 

小児の場合

考える子どものイラスト小児の場合、受傷後1年を経過した時期でも、後遺障害等級認定が困難なことがあります。

成人後の自立した社会的生活や就労能力をより正確に判断するため、幼稚園や学校での集団生活への適用困難の有無を確認する必要があります。

例えば、乳幼児の場合は、幼稚園等の集団生活をおこなうまで、幼児では就学期まで、後遺障害の認定をまつという考えも尊重されるべきといわれています。

 

高齢者の場合

症状固定後一定期間が経過し、状態が安定した時点を症状固定とします。

後遺障害等級認定後に悪化した場合、交通事故による受傷が通常の加齢による変化を超えて悪化の原因になっていないことが明白でない限り、上位等級への認定変更の対象とはなりません。

高次脳機能障害をはじめとする当事務所の弁護士による解決事例はこちらをご覧ください。

また、高次脳機能障害の後遺障害に特有の書類はこちらをご覧ください。

注釈

1)びまん性軸索損傷(Diffuse Axonal Injury=DAI)
頭部外傷のうち、受傷直後から6時間を超えた意識消失がある場合を、臨床的にびまん性軸索損傷と定義し、大脳白質内部に張り巡らされた神経コードの広範囲な断線が推定され、画像上確認できない。脳室の拡大や脳全体の萎縮により推認する。

2)JCS(ジャパン・コーマ・スケール) 意識障害の日本版基準
覚醒状態大きく3段階に区切り、意識状態を数値化します。
1桁:刺激なしで覚醒している状態 2桁:刺激すると覚醒 3桁:刺激をしても覚醒しない状態 桁が大きいほど(例:JCS100)重症となります。

3)GCS(グラスゴー・コーマ・スケール) 意識障害の世界版基基準
開眼、言語の応答、運動機能の3区分で点数化します。15点が満点で正常値。点数が低いほど重症となります

 

 

高次脳機能障害(遷延性意識障害)に特有の書類

頭部外傷後の意識障害についての所見

意識障害についての所見
この書類は、初診の病院に記入してもらうものです。

通常、交通事故により意識障害が生じた場合、救急車で救急病院へ搬送されます。

搬送された病院では、意識障害のレベルをJCSやGCSで把握してカルテに記載しています。

そこで、症状固定時にカルテに記載された意識状態を医師に依頼して、この書類に記入してもらいます。

意識障害の推移を把握することで、高次脳機能障害の要件に該当するかどうか、そのレベルがどれほどのものであるかを確認することになります。

意識障害についての所見についての書式はこちらからダウンロードいただけます。

 

神経系統の障害に関する医学的意見

神経系統の障害に関する医学的意見この書類は主治医に、症状固定時に記入してもらうものです。

まず、高次脳機能障害の要件になっている脳外傷の所見が画像上確認できるかどうか記載してもらいます。

そして、交通事故による頭部外傷により、上肢や下肢の運動機能にどのような影響があるか、体幹は維持されているかなどの記入欄もあります。

続けて、食事や着衣、トイレ、入浴、移動といった日常生活動作を被害者が自ら行うことができるか、介助が必要な場合は、その程度(声掛けで足りるのか、全面的に補助する必要があるのか)を記入してもらいます。

さらに、てんかん発作の有無や認知、情緒、行動障害のチェックリストもあります。

この書類を作成してもらう場合には、主治医の医師に、被害者の生活状況を十分に把握してもらっておく必要があります。

しかしながら、退院後にこの書類の作成をお願いする場合などは特に、退院後の状況を医師が把握しきれていないケースもあります。

したがって、次の日常生活状況報告書を活用するなどして、生活状況を知ってもらうことが重要です。

神経系統の障害に関する医学的意見の書式はこちらからダウンロードいただけます。

 

日常生活状況報告書

日常生活状況報告書この書類は、被害者の配偶者や子、同居の親族などの被害者に近い人が作成する書類です。

交通事故の前後で、被害者の生活状況がどのように変化したかを把握するために、交通事故の前の生活状況(約束を守れていたか、自立した生活が送れていたかどうか)と事故後のそれをチェック項目で数値化します。それとともに、症状を裏付ける具体的なエピソードをスペースに記入します。

2枚目では、就労、就学の状況、転職や転校をした場合には、その理由を記載するとともに、身の回りの動作を被害者自ら行うことができるかを回答します。

この書類は、他の書類と整合性が取れているかが非常に重要になります。

当初の意識障害の程度やカルテの記載とかけ離れた報告書になっている場合、信用性がないとされてしまうこともあるため、注意が必要です。

日常生活状況報告書の書式はこちらからダウンロードいただけます。

 

こうした書類を被害者の方が自分たちで作成することは非常に困難です。

専門家である弁護士にご依頼いただければ、弁護士が被害者のご家族からのお話を伺うとともに、医師との調整も行い、被害者の方の症状を適切に伝えるべく、書類を作成するサポートをいたします。

作成する書類やそれぞれのポイントについては、是非弁護士にご相談ください。

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