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後遺障害とは何ですか?【弁護士が解説】


掲載日:2014年6月1日|最終更新日:2019年6月13日

交通事故でいう「後遺障害」とは、将来においても回復が困難と見込まれる身体的あるいは精神的なき損状態をいい、労働能力の喪失を伴うものをさします。

日常的に使用している「後遺症」とは違っていますので、注意が必要です。

 

 

後遺障害とは

交通事故にあってけがをすると、病院で治療を行わなければなりません。

治療をすれば完全にけがが治って何の問題もないということも多いですが、他方で、治療を行っても完全にはけがが治らないということもあります。

バイク事故例えば、バイクに乗っているときに交通事故にあって、転倒したはずみで首の骨を折ってしまうと、脊髄を損傷して麻痺が残ってしまうことがあります。

この場合、麻痺がおさまらず一生車椅子での生活を余儀なくされるということもあるわけです。

けがの内容によっては、現代の医学をもってしても完全に治すことができないものはどうしてもあります。

こうしたものを全て捉えて「後遺症」と私たちは表現しています。

私たちが一般的に使用している「後遺症」は、体に何らかの不具合が残ることを広く捉えた言葉です。

ところが、こうした後遺症が全て交通事故の加害者(保険会社)から補償してもらえるかというとそうではありません。

交通事故の被害者の方はまずはこのことを把握しておかなければなりません。

交通事故はここ数年減ってきてはいますが、依然として全国のあちこちで起こっています。

したがって、多数発生する交通事故の補償については、損害の公平な分担という観点から一定の基準が必要となります。

そのため、後遺症についても、どのようなものを交通事故で補償する対象とするかについて基準が設けられているのです。

この基準に該当するものが「後遺障害」といいます。

自賠責保険では、将来においても回復が困難と見込まれる身体的あるいは精神的なき損状態をいい、労働能力の喪失を伴うものをいうとされています。

このように「後遺症」=「後遺障害」ではないのです。

後遺症のうち、一定の基準を満たしたもののみが「後遺障害」とされる関係にあるので、

 後遺症 > 後遺障害 の関係といえます。

「後遺障害」は、自動車損害賠償保障法により規定された一種の法律用語といえます。

したがって、後遺障害に当たるかどうかは法的な判断を伴うのです。

ここに法律の専門家である弁護士のサポートを受けるべき理由があるわけです。

 

 

後遺障害の等級の基準

後遺障害診断先ほどの説明のとおり、どのようなものが後遺障害に該当するかについてはあらかじめ基準が設定されています。

後遺障害には症状の程度に応じて、1級から14級までの等級があります。

そして、その等級の中に、具体的な症状が定められています。

例えば、交通事故で比較的多く発生するむちうち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群)については、神経症状として、12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」や14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当する可能性があります。

後遺障害の等級の一覧は下表をご覧ください。

等級 後遺障害の内容 自賠責の保険金額 労働能力喪失率
第1級
  1. 1)両眼が失明したもの
  2. 2)咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  3. 3)両上肢をひじ関節以上で失ったもの
  4. 4)両上肢の用を全廃したもの
  5. 5)両下肢をひざ関節以上で失ったもの
  6. 6)両下肢の用を全廃したもの
3,000万円 100%
第2級
  1. 1)1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
  2. 2)両眼の視力が0.02以下になったもの
  3. 3)両上肢を手関節以上で失ったもの
  4. 4)両下肢を足関節以上で失ったもの
2,590万円 100%
第3級
  1. 1)1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
  2. 2)咀嚼又は言語の機能を廃したもの
  3. 3)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  4. 4)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  5. 5)両手の手指の全部を失ったもの
2,219万円 100%
第4級
  1. 1)両眼の視力が0.06以下になったもの
  2. 2)咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 3)両耳の聴力を全く失ったもの
  4. 4)1上肢をひじ関節以上で失ったもの
  5. 5)1下肢をひざ関節以上で失ったもの
  6. 6)両手の手指の全部の用を廃したもの
  7. 7)両足をリスフラン関節以上で失ったもの
1,889万円 92%
第5級
  1. 1)1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
  2. 2)神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  3. 3)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  4. 4)1上肢を手関節以上で失ったもの
  5. 5)1下肢を足関節以上で失ったもの
  6. 6)1上肢の用を全廃したもの
  7. 7)1下肢の用を全廃したもの
  8. 8)両足の足指の全部を失ったもの
1,574万円 79%
第6級
  1. 1)両眼の視力が0.1以下になったもの
  2. 2)咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 3)両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
  4. 4)1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  5. 5)脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
  6. 6)1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
  7. 7)1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
  8. 8)1手の5の手指又はおや指を含み4の手指を失ったもの
1,296万円 67%
第7級
  1. 1)1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
  2. 2)両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  3. 3)1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  4. 4)神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  5. 5)胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  6. 6)1手のおや指を含み3の手指を失ったもの又はおや指以外の4の手指を失ったもの
  7. 7)1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
  8. 8)1足をリスフラン関節以上で失ったもの
  9. 9)1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  10. 10)1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  11. 11)両足の足指の全部の用を廃したもの
  12. 12)外貌に著しい醜状を残すもの
  13. 13)両側の睾丸を失ったもの
1,051万円 56%
第8級
  1. 1)1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
  2. 2)脊柱に運動障害を残すもの
  3. 3)1手のおや指を含み2の手指を失ったもの又はおや指以外の3の手指を失ったもの
  4. 4)1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
  5. 5)1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  6. 6)1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  7. 7)1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  8. 8)1上肢に偽関節を残すもの
  9. 9)1下肢に偽関節を残すもの
  10. 10)1足の足指の全部を失ったもの
819万円 45%
第9級
  1. 1)両眼の視力が0.6以下になったもの
  2. 2)1眼の視力が0.06以下になったもの
  3. 3)両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 4)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  5. 5)鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  6. 6)咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  7. 7)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  8. 8)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
  9. 9)1耳の聴力を全く失ったもの
  10. 10)神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  11. 11)胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  12. 12)1手のおや指又はおや指以外の2の手指を失ったもの
  13. 13)1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
  14. 14)1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
  15. 15)1足の足指の全部の用を廃したもの
  16. 16)外貌に相当程度の醜状を残すもの
  17. 17)生殖器に著しい障害を残すもの
616万円 35%
第10級
  1. 1)1眼の視力が0.1以下になったもの
  2. 2)正面を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 3)咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
  4. 4)14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 5)両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
  6. 6)1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
  7. 7)1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
  8. 8)1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  9. 9)1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
  10. 10)1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
  11. 11)1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
461万円 27%
第11級
  1. 1)両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 2)両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 3)1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  4. 4)10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 5)両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
  6. 6)1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
  7. 7)脊柱に変形を残すもの
  8. 8)1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの
  9. 9)1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
  10. 10)胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
331万円 20%
第12級
  1. 1)1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 2)1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 3)7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  4. 4)1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
  5. 5)鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
  6. 6)1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
  7. 7)1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
  8. 8)長管骨に変形を残すもの
  9. 9)1手のこ指を失ったもの
  10. 10)1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
  11. 11)1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの
  12. 12)1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
  13. 13)局部に頑固な神経症状を残すもの
  14. 14)外貌に醜状を残すもの
224万円 14%
第13級
  1. 1)1眼の視力が0.6以下になったもの
  2. 2)正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 3)1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 4)両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  5. 5)5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  6. 6)1手のこ指の用を廃したもの
  7. 7)1手のおや指の指骨の一部を失ったもの
  8. 8)1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
  9. 9)1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
  10. 10)1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
  11. 11)胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
139万円 9%
第14級
  1. 1)1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  2. 2)3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  3. 3)1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
  4. 4)上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  5. 5)下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  6. 6)1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
  7. 7)1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
  8. 8)1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
  9. 9)局部に神経症状を残すもの
75万円 5%
 
 

後遺障害の認定を受けるには

このように後遺障害には、けがをした部分とその状況に応じて、細かく基準が設定されています。

そのため、後遺障害と認定してもらうためには、この基準を満たしているかどうかの審査をしてもらわなければなりません。

審査は、自賠責保険の損害調査を行う損害保険料率算出機構という機関の自賠責損害調査事務所というところが行っています。

そして、この審査の申立ての方法には2つの方法があります。

(1)事前認定

一つは事前認定という方法です。

相手方の任意保険会社を通じて審査を行う方法
具体的には、医師に作成してもらった後遺障害診断書を任意保険会社に提出することで手続きを進めます。
交通事故の相手方が任意保険に加入していない場合には、事前認定という手続きにより後遺障害の認定を受けることはできません。
例外的に人身傷害保険を利用して、被害者自身の任意保険会社を通じて審査を行う方法はあります。

 

(2)被害者請求

もう一つの方法が、被害者請求という方法です。

被害者自身が相手方の自賠責保険に対して手続きを進める方法
この方法はその名のとおり、被害者自身が相手方の自賠責保険に対して、後遺障害診断書やそのほかの必要書類を送付することで手続きを進めるやり方です。

どちらの方法でも、最終的に書類が先ほどの自賠責損害調査事務所へ送られて、後遺障害に該当するかどうかについての調査がなされ、その結果が被害者の方へ知らされることになります。

弁護士しかしながら、この2つのやり方には、それぞれメリットやデメリットがあるので、どちらを選択するかはしっかりと考えておかなければなりません。

また、被害者請求については、被害者自身が手続きを行うといっても、専門家である弁護士が代理人として手続きを行うことは可能となっています。

 

 

後遺障害の認定はいつ受けるのか

砂時計それでは、後遺障害の認定はいつ受けるのでしょうか。

これについては、後遺障害の定義を考えればわかります。

後遺障害は、将来においても回復が困難と見込まれる状態をいいます。

つまり、現代の医学をもってしてもこれ以上はなかなか良くならないという状態なのです。

そのため、後遺障害の認定を受けるタイミングは、一定の期間治療を行ったけれどもこれ以上は改善が見込めないといえる段階ということになります。

このことを症状が固定するという意味で、「症状固定」といいます。

弁護士したがって、後遺障害の認定を受けるのは、医師から症状固定という診断を受けてからということになります。

被害者の方のけがの内容や程度によっても変わってきますが、一般的には交通事故から半年程度経過した時点ということになります。

 

 

後遺障害が認定されたら

後遺障害の認定手続きを行って、実際に後遺障害が認定された場合、認定されなかった場合と何が違うかというと、賠償金の金額が変わるということです。

後遺障害が認定されるとどうして賠償金の金額が変わる?

後遺障害が認定されると、以下の補償を請求することができるようになります。

後遺障害が認定されると請求できる補償

後遺障害慰謝料

後遺障害が残ってしまったということに対する被害者の精神的な苦痛を補償するもの逸失利益
残った後遺障害が今後の仕事や家事、日常生活に影響を与え、収入が減少してしまうことを補償するもの

後遺障害が認定されなかった場合には、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができないわけですので、後遺障害が認定されるとそれだけ賠償金の額は増えるということになります。

後遺障害慰謝料について
けがの通院に対する慰謝料と同じく、等級に応じて一応の基準となる金額が設定されています。
この基準にも、「自賠責保険の基準」「任意保険会社の基準」「裁判所の基準」という3つの基準があり、どの基準を用いるかによって、慰謝料の金額も変わってきます。
特に後遺障害の慰謝料については、等級が上がるにつれて慰謝料の額も高額になるため、基準による慰謝料の差も大きくなってきます。
そのため、交通事故を専門とする弁護士に依頼して、保険会社との示談交渉を代わりに行ってもらうということも必要になってきます。
逸失利益について
認定された後遺障害が将来どのように仕事や家事に影響するか、その期間はどの程度なのかといった点が保険会社との示談交渉では問題になりますし、そもそも逸失利益の計算方法も法的な問題であるため、被害者の方にはわかりにくくなっています。

こうした点も踏まえると、後遺障害に関する問題はやはり専門家である弁護士のサポートを受けるべきであるといえます。

 

 

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