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交通事故で高次脳機能障害 - 後遺障害は認定される?【弁護士解説】


掲載日:2014年6月2日|最終更新日:2019年5月9日

交通事故で高次脳機能障害の後遺症が残った場合には、自賠責保険による後遺障害が認定される可能性が非常に高いです。

きちんと後遺障害の認定手続きを行いましょう。

高次脳機能障害とは

事故交通事故にあったときに、事故の衝撃で頭を打ってしまうことがあります。

特に、歩行者として歩いているときに自動車とぶつかってしまった場合や自転車やバイクに乗っていて事故にあった場合には、転倒するときに頭を地面に打ち付けてしまうことが比較的多くなってしまいます。

歩行者や自転車の場合、ほとんどの場合ヘルメットもしていませんので、衝撃が直接頭に加わるため、脳に大きなダメージが加わってしまいます。

このとき、頭蓋骨骨折や頭蓋底骨折という脳の外側を覆っている骨を骨折するだけでなく、脳自身にもけがを負うことがあります。

医師の診断としては、「くも膜下出血」や「脳挫傷」、「びまん性軸索損傷」といったものです。

高次脳機能障害の後遺症

このように脳にけがを負ってしまった場合には、なかなか完治することは難しく、後遺症が残ることが多くなります。

具体的には、以下のような後遺症です。

認知障害
脳は記憶をつかさどる器官のため、新しいことが覚えられない、気が散る、計画を立てることができないといった障害が残ることがあります。
行動障害
また、脳は体に指令を出して、実際に行動する際にも重要な器官です。
そのため、TPOに合わせた行動ができない、複数のことを同時に処理できない、コミュニケーションがうまく取れないといった障害が残ってしまうこともあります。
人格障害
さらに、脳はその人の考え方や性格にも影響を与えています。
脳にダメージを負うと、こうした性格にも変化が生じてしまうことがあります。
交通事故による後遺症としては、怒りやすくなる、自己中心的になる、気分の波が激しくなるといったものがあります。

こうした交通事故による脳のけがの後遺症のことを高次脳機能障害といいます。

 

 

高次脳機能障害と後遺障害

弁護士西村裕一高次脳機能障害による後遺症も他の後遺症と同じく、自賠責保険の後遺障害の認定をされなければ、保険会社から補償を得ることが原則としてできません。

自賠責保険が高次脳機能障害の後遺障害の等級について、どのように定めているかをみていきます。

後遺障害の等級

▶高次脳機能障害の後遺障害等級一覧

等級 内容
別表1 1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表1 2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
別表2 3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
別表2 5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2 7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表2 9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

このように、高次脳機能障害について、自賠責保険の後遺障害では、等級が1番高く、症状が最も重篤である1級から9級までの基準を設定しています。

なお、症状が極めて軽度な場合には、9級10号より下の等級である12級13号や14級9号の神経症状の後遺障害が認定されることもあります。

1級と2級では、介護が必要という点は同じですが、「常に」なのか「随時」なのかで変わってきます。

また、3級と5級、7級、9級については、仕事や家事に影響があるという点は同じですが、「全く働くことができない」(3級)のか、単純作業といった「特に簡単な仕事しかできない」(5級)のか、「比較的簡単な仕事しかできない」(7級)のか、「できる仕事がある程度絞られる」のか(9級)によって、認定される等級が変わってきます。

労災保険の場合と自賠責保険の場合での等級の認定が異なります。

 

労災保険の場合

具体的に被害者の高次脳機能障害による後遺症がどの程度の後遺障害に該当するかについて、労災保険では、①意思疎通能力、②問題解決能力、③作業負荷に対する持続力・持久力、④社会行動能力という4つの能力という観点からその能力の程度によって、等級を認定しています。

4つの能力
  • ①意思疎通能力
    この能力は、記憶や認知、言語力に関する能力で、職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定することとされています。
  • ②問題解決能力
    この能力は、理解力や判断力に関するもので、作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解して、適切な判断を行った上で、円滑に業務ができるかどうかについて判定されます。
  • ③作業負荷に対する持続力、持久力
    この能力は、一般的な就労時間に対応できるだけの能力があるかどうかという観点で判定されます。精神的な意欲や気分又は注意の集中がどの程度継続できるかどうかが問われます。
  • ④社会行動能力
    この能力は、協調性に関するもので、職場や家族などのコミュニティーにおいて他人と円滑な共同作業、社会的な行動ができるかどうかについて判定されます。主に協調性があるかどうかやその場に不適切な行動を行うことがあるか、その頻度について検討がされます。

 

自賠責保険の場合

他方、自賠責保険では、労災保険と異なり、等級に応じた補足的な考え方が示されており、この考え方に照らして等級が認定されています。

等級 補足的な考え方
別表1 1級1号 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
別表1 2級1号 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの
別表2 3級3号 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの
別表2 5級2号 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を維持できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの
別表2 7級4号 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
別表2 9級10号 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの

こうした補足的な考え方も踏まえると、病院や介護施設で寝たきりとなり、ベッドから起き上がることができないといった場合には1級1号に該当するでしょう。

また、介護施設や自宅から1人で外に出ることができない場合には2級、何とか1人で外出できたり、トイレや食事、着替えが自分でできるといった場合には3級(場合によっては5級)に該当するといえるでしょう。

仕事ができているケースでは、その内容や転職をしているかなどによって、5級から9級の判断がなされることになります。

 

 

高次脳機能障害の後遺障害の認定手続き

高次脳機能障害の後遺障害の認定手続きの方法ですが、他の後遺障害の認定手続きと同様に、相手方の任意保険会社を通じて手続きを行う事前認定と被害者が直接相手方の自賠責保険に書類を提出する被害者請求という2つの方法があります。

もっとも、高次脳機能障害の案件の場合、以下の特徴があります。

成年後見の申立てが必要な場合がある

寝たきり高次脳機能障害を負った被害者ご本人は寝たきりで何もできないということもありますので、この場合には被害者のご家族や代理人の弁護士が後遺障害の認定手続きを行います。
この関係で、後遺障害の認定にあたって、裁判所に成年後見の申立てを行わなければならないというケースもでてきます。
一概にはいえませんが、3級程度の後遺障害が認定される可能性がある場合には、成年後見の申立てを検討する必要がでてきます。

特別な機関が審査を行う

説明する男性通常の後遺障害の認定手続きは損害保険料率算出機構が各地域に設けている自賠責損害調査事務所で後遺障害に該当するかどうか、該当する場合、何級に当たるかの判断を行います。
ところが、高次脳機能障害の後遺障害については、被害者に残っている後遺症も重篤であるのはもちろん、後遺症の程度を具体的に認定して、等級を決定するのは非常に難しいものです。
そのため、高次脳機能障害の案件については、特定案件と位置付けられており、外部の脳外科の医師なども認定手続きに参加する自賠責保険審査会というところで審査が行われます。
そのため、記録の整理を自賠責損害調査事務所で行ったのち、自賠責保険審査会へ記録が送付されますので、通常の後遺障害の認定手続きよりも時間がかかります。
早ければ3か月程度で結果がでるケースもありますが、半年程度は時間を要することもあります。

カルテが必ず必要

高次脳機能障害の後遺障害の認定手続きにあたっては、交通事故の直後にどの程度の意識障害があったか、どのくらいの期間意識障害が続いていたか、その後の症状推移はどうであったかを把握しなければなりません。
そのため、他の後遺障害のケースと異なり、手続きにあたっては、カルテを提出することが必ず必要になってきます。

後遺障害診断書以外にも書類が必要

本さらに、高次脳機能障害の案件では、後遺障害診断書の記載はもちろん、そのほかにも、現在の被害者の方の日常生活の状況を記載する日常生活状況報告書や初診時の意識障害の程度を記載する書類、被害者の方の症状を医師がどのように判定しているかを示す医学的所見に関する書類を提出しなければなりません。
日常生活状況報告書は、被害者のご家族が作成しますが、初診時の意識障害の程度に関する書類や医学的所見に関する書類は主治医に作成をお願いしなければなりません。

このように、高次脳機能障害の後遺障害の認定手続きは、申請に当たっての準備もそれだけ大変になってくるため、専門家である弁護士のサポートを受ける必要性が高いといえます。

 

 

後遺障害が認定されたあとに必要なこと

高次脳機能障害の後遺障害の認定手続きが終わったあとには、保険会社との示談交渉が必要です。

このとき、高次脳機能障害の事案では、通常の後遺障害慰謝料や逸失利益という項目についての交渉はもちろん、近親者の精神的な苦痛を補償してもらう近親者慰謝料や近親者の介護費用、これから先の介護費用(将来介護費)、自宅のリフォーム費用といったものも保険会社と話し合う必要があります。

おのずと、請求する賠償金の額も高額になってきますし、被害者の方がご自身で保険会社と交渉する金額と弁護士が代理人として交渉する金額ではその額が大幅に変わってくることも多くあります。

示談交渉に当たっても、専門家である弁護士に相談をして進めてくのが適切な補償を得るためにも必要になってきます。

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