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交通事故で複合靭帯損傷。後遺障害は認定される?


掲載日:2017年4月10日|最終更新日:2019年6月12日

車椅子交通事故で複合靭帯損傷のけがを負った場合には、①膝関節の不安定性②膝関節の可動域の制限③膝関節の痛みという3種類の後遺症が残ってしまう可能性があり、自賠責保険で定める後遺障害が認定される可能性が高いです。

 

 

 

複合靭帯損傷とは

膝の靭帯のイラスト複合靭帯とは、膝の部分の靭帯を総称したものです。

膝関節には全部で4つの靭帯があります。

それが①前十字靭帯②後十字靭帯③内側側副靭帯④外側側副靭帯です。

複合靭帯損傷とは、この4つの靭帯のうち2つ以上の複数の靭帯が損傷してしまうことをいいます。

膝はこの4つの靭帯がそれぞれに機能して膝関節の部分が安定するようになっています。

一つの靭帯が損傷しただけでもダメージがあるわけですが、複合靭帯損傷の場合、それが複数あるわけですので、それだけ膝に与える影響は大きいということです。

交通事故では、歩行者として歩いているところで車と衝突し、そのときに膝の部分に車がぶつかった場合や自転車で走行しているところで事故にあい、転倒して膝を強打してしまったような場合に靭帯損傷のけがをすることがあります。

前十字靭帯

膝関節が前後にずれるのを防いでいます。

前十字靭帯を損傷すると、痛みとともに「ブツッ」という音がすることがあるとされており、交通事故の際に膝周辺で音がした場合には、前十字靭帯を損傷している可能性があります。

後十字靭帯

膝関節が前後にずれるのを防いでいます。

後十字靭帯はバイク事故などで起こりやすいけがとされています。

また、車の交通事故でも追突事故によって後十字靭帯損傷のけがを負うこともあります。

具体的には、追突の衝撃で体が前に揺さぶられた際に、膝を曲げた状態でダッシュボードに膝をぶつけてしまって損傷するというケースです。

内側側副靭帯

膝関節が左右にずれるのを防いでいます。

4つの靭帯のうち、一番損傷を起こしやすいのが③の内側側副靭帯といわれています。

内側側副靭帯を痛めてしまうと、膝の内側が痛いのはもちろん、膝を外側へ動かそうとすると激しい痛みが生じます。

外側側副靭

膝関節が左右にずれるのを防いでいます。

 

 

複合靭帯損傷と後遺症

膝を痛めた女性膝の靭帯のうち一つだけの損傷であれば、手術をせず保存療法で回復することもあるのですが、複合靭帯損傷の場合、手術を行って、靭帯の再建をするということも多くあります。

もっとも、手術を行っても完全に元どおりになるかといえば、必ずしもそうではありません。

複合靭帯損傷の後遺症としては、膝関節の安定性が失われ、不安定な状態が残ってしまうこと(動揺関節といいます。)や膝関節の可動域が制限されてしまうこと、膝関節周辺の痛みが治療をしても完全には取れないこともあるのです。

このように、交通事故で複合靭帯損傷のけがをすると、①膝関節の不安定性(動揺関節)、②膝関節の可動域の制限、③膝関節の痛みという3種類の後遺症が残ってしまうことがあります。

 

 

複合靭帯損傷と後遺障害

膝を痛めた女性そこで、上記①〜④のような後遺症が残ってしまった場合、交通事故では自賠責保険が定める後遺障害の認定を受けることを検討しなければなりません。

なぜなら、交通事故の賠償実務では、あらゆる後遺症がすべて補償されるというわけではなく、一定の基準を満たしたものが補償の対象として取り扱われているからです。

補償の対象として取り扱われる後遺症がまさに後遺障害なのです。

後遺障害は認定制度を採用しており、自賠責保険の支払いに関して調査を行っている損害保険料率算出機構という機関の自賠責保険損害調査事務所というところが判断を行っています。

そこで、複合靭帯損傷の後遺症に関して、後遺障害の等級基準がどのように設定されているかについて解説をしていきます。

膝関節の不安定性(動揺関節)

膝関節の不安定性という後遺症については、自賠責保険の後遺障害では「準ずる」後遺障害として、特殊な取扱いをしています。

具体的には、もっとも程度の重い8級から12級までの3段階の等級が想定されています。

  • 8級相当  常に硬性補装具を必要とするもの
  • 10級相当  時々硬性補装具を必要とするもの
  • 12級相当  重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの

この等級基準をみてわかるとおり、ポイントは硬性補装具を必要とするかどうかです。

そもそも硬性補装具を必要としない場合には後遺障害は認定されません。

 

膝関節の可動域の制限

複合靭帯損傷のけがを負うと、リハビリを行っても可動域が完全には戻らないというリスクもあります。

この点について、自賠責保険では以下の等級が用意されています。

10級11号
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
靭帯損傷をしていない方の膝関節の可動域と比べ、靭帯損傷をした方の可動域が2分の1以下になってしまっている場合に認定
12級7号
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
2分の1以下まではないものの4分の3以下になってしまっている場合に認定

膝関節の主要運動は、屈曲・伸展という動きになります。膝をまっすぐ伸ばした状態から膝を曲げていく動きになります。

伸展は膝をまっすぐ伸ばした状態で0度、屈曲角度は130度が参考可動域となっています。

したがって、靭帯損傷をしていない方の可動域が参考可動域と同じであると仮定すると、65度以下に屈曲角度が制限されてしまっていれば10級、95度以下に制限されている場合には12級が認定されるということになります。

逆にいうと、120度という可動域であれば、10度の可動域制限があるものの、後遺障害としては認定されないということになるわけです。

 

膝関節の痛み

複合靭帯損傷のけがをした場合に残ってしまった痛みについても後遺障害の基準として2つの等級が用意されています。

そのため、いずれかの等級が認定される可能性があります。

12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
画像所見:膝の画像で痛みの原因となる異常がはっきりと確認できる場合には、痛みの原因が医学的に証明されているとして12級が認定されます。
14級9号
局部に神経症状を残すもの
画像所見:異常がはっきりと確認できない場合には、医学的に痛みの原因が証明まではできていないとされ、14級の認定にとどまります。

12級と14級を分けるポイントの一つは画像所見といわれています。

ただし、14級が認定されるのは、ほぼ常時痛みが残っている場合です。

したがって、「動かすとたまに痛い」、「寒いと痛い」、「雨の日だけ痛い」といった症状の場合には、「動かさないと痛くない」、「寒くなければ痛くない」、「雨の日以外は痛くない」ことになり、ほぼ常時痛みが残っていると評価してもらうことができず、14級も認定されず、非該当という結果になります。

 

 

複合靭帯損傷の後遺障害のポイント

交通事故で複合靭帯損傷のけがを負って後遺障害の認定を受ける場合のポイントですが、以下の点が挙げられます。

MRI検査を受ける

靭帯は軟部組織と呼ばれ、骨とは違う性質をもっています。

そのため、骨折を調べるために用いるレントゲンやCTでは靭帯の状態をしっかりと確認することが難しいとされています。

そのため、靭帯損傷のけがの程度や症状の原因を確認するためにはMRI検査が必要不可欠になります。

診療報酬明細医師の作成する診断書に「靭帯損傷」と記載がある事案でも、診療報酬明細書で検査内容を確認するとMRI検査は行っていないというケースも実際に散見されます。

これでは、被害者の方の靭帯の損傷状況ははっきりとわからず、後遺障害を判断する自賠責保険損害調査事務所も「本当に靭帯を損傷しているのか?」というように考えてしまいます。

そのため、靭帯損傷が疑われている場合には必ずMRI検査を受けることが必要です。

もちろん、MRI検査は後遺障害の認定にあたって必要になるだけでなく、治療の方針を決めるためにもそもそも必要な検査です。

きちんと受診をしましょう。

 

可動域の測定をきちんと行ってもらう

膝関節の可動域の制限に関する後遺障害は、制限されている可動域の角度によって後遺障害に該当するかどうか、該当するとして何級が認定されるかが変わってきます。

そのため、正確な可動域の測定が非常に重要になります。

 POINT 

角度計を用いて理学療法士や医師にきちんと測定してもらい、それを後遺障害診断書に過不足なく記入してもらうようにしなければなりません。

可動域の角度の数値は症状固定時のものを測定して記載するわけですが、リハビリの最中にも可動域の測定を行うのが通常です。

そのため、例えば、リハビリ中は屈曲角度が110度まで改善していたのに、症状固定の段階ではそれが90度まで悪化していたという場合、経過が不自然であるとして後遺障害診断書に記載された可動域は信用できないと判断されることもあります。

したがって、治療中の段階から正確に可動域を測定してもらうということが必要です。

 

 

複合靭帯損傷で後遺障害が認定されたら

複合靭帯損傷の後遺症について、自賠責保険の設定する基準に基づき後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料という慰謝料と逸失利益という2つの補償項目が追加されることになるため、賠償額が高額になるのが通常です。

具体例 交通事故で複合靭帯損傷のけがを負い、12級7号の後遺障害が認定された場合

被害に遭われた方:35歳会社員(年収450万円)
後遺症:膝関節の可動域の制限の後遺症が残った


弁護士が保険会社と示談交渉するときに使用する裁判所の基準をベースに請求額を試算すると、

後遺障害慰謝料は290万円

逸失利益は450万円 × 14% × 15.8027(32年のライプニッツ係数) = 995万5701円

となり、合計で1000万円を超える損害賠償請求を検討することになります。

この点、自賠責保険が後遺障害12級の際に支払う金額の限度額は224万円となっており、上記の金額との差額は1000万円近くに上ります。

そのため、交通事故で複合靭帯損傷のけがを負ってしまった場合には、後遺障害の認定の手続も含めて、その後の保険会社との示談交渉までを専門家である弁護士に任せる必要性が高いといえます。

 

 

 

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