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主婦の休業損害はいくら請求できる?【計算方法を弁護士が解説】


掲載日:2015年6月16日|最終更新日:2019年11月12日

弁護士西村裕一主婦の休業損害は、賃金センサスを用いた裁判基準での計算方法と、日額5700円をベースとして計算する自賠責保険の基準といった複数の基準があります。

したがって、どの基準を用いるかによって金額も変わってくるため、適切な補償を受けるためには、計算方法をしっかりと理解しておくことが大切です。

 

休業損害とは

休業損害

交通事故によるけがのために仕事を休んだり、治療のために早退したりすることで収入が減少したことに対する損害をいいます。

寝たきり入院のケースがわかりやすいのですが、病室で1日過ごすことになれば、仕事を休まざるをえません。

そうすると、会社員の場合、有給休暇を使用しない限り、働いていませんので給料は得られないことになります。

自営業の場合も、営業を行うことができなければ売上をあげることはできませんので、収入が得られないことになります。

このように休業損害とは、収入の減少を損害とするもので、治療費などの積極損害(事故が原因で費用がかかったもの)とは異なり、消極損害(事故により失ったもの)に位置づけられる損害です。

 

 

主婦に休業損害が認められる?

主婦の場合、家事や育児を行っています。

この家事や育児は家族を支えるために必要不可欠なものです。

もっとも、主婦の方は家事や育児を行ってお金を得ているわけではありません。

その意味では、現実的な収入はゼロです。

そうすると、主婦には収入が発生していない以上、休業損害は認められないという考え方もできなくはありません。

しかしながら、交通事故の賠償において、主婦にも休業損害は認められることとなっており、この取扱いは実務上確立されています。

最高裁判所も主婦(家事従事者)の休業損害を認めています(最高裁昭和50年7月8日判決)。

その理由としては、他人の生活のために家事を行っていることから、会社員として働いているのと同様に家事や育児には経済的な価値があるという考えからです。

この考え方からすると、一人暮らしで家事を行っている場合は、自分の生活のために行っているにすぎないため、主婦の休業損害は認められません。

他方、近年増えている男性が家事や育児を行うという主夫については先ほどの考え方から、主婦(主夫)の休業損害が認められます。

つまり、性別や年齢を問わずに主婦的労務に従事している人は家事従事者として、休業損害の対象となります。

なお、結婚したものの後に離婚した方の中には、シングルマザー(シングルファザー)の方もいらっしゃいますが、シングルマザーは、子どもの育児、家事を行っているという点では主婦と何ら違いはありません。

そのため、シングルマザーでも主婦の休業損害を請求することができる可能性があります。

 

 

主婦の休業損害の計算方法

ここまで解説してきたように、主婦にも休業損害は認められます。

もっとも、主婦は現実的にお金のやり取りは発生していないため、休業損害をどのように計算するかが問題となります。

この点に関して、交通事故の賠償実務では、主婦の休業損害について、以下の3つの基準があります。

自賠責保険の基準

自賠責保険の基準は、国が最低限加入を義務付けている自賠責保険において、主婦の休業損害を計算する方法です。

自賠責保険の基準では、主婦の休業損害について、休業1日あたりの金額を5700円として、休業日数をかけることで計算します。

休業日数は治療実日数を用います。

具体例 180日(6か月)の期間に90日の通院があった場合

5700円 × 90日 = 51万 3000円 が自賠責保険の基準での休業損害額となります。

ただし、注意しなければならない点があります。

それは、自賠責保険には限度額があるということです。

自賠責保険の限度額は 120万円であり、この 120万円には治療費はもちろん、慰謝料、休業損害もすべて含まれます。

したがって、治療費に 60万円かかっていた場合、慰謝料と休業損害をあわせて、120万円 − 60万円 = 60万円 しか受取額がないということになるわけです。

 

任意保険会社の基準

自賠責保険の 120万円を超える場合などでは、保険会社が被害者に示談交渉する際に、主婦の休業損害を独自に計算して提案を行います。

このときの基準が任意保険会社の基準となります。

任意保険会社は、対人無制限と設定しているので、自賠責保険のように 120万円の限度額は設定されていませんが、任意保険会社としては少しでも支払う金額が安いほうがいいので、自賠責保険の基準をベースに主婦の休業損害を低めに計算するということも多いです。

 

裁判所の基準

3つめの基準は、裁判所が主婦の休業損害を計算する際に用いる基準で、裁判所の基準といいます。

基本的な考え方は、自賠責保険の基準と同じで、

1日あたりの休業金額 × 休業日数 で計算するのですが、1日あたりの金額が自賠責保険の基準と異なっています。

裁判所の基準では、平均賃金(賃金センサス)を用います。

平均賃金は毎年変動していますが、直近の統計である平成29年は 377万8200円となっています(女性、学歴計、年齢計)。

つまり、377万8200円 ÷ 365日 = 1万351円 が1日あたりの休業金額となります。

自賠責保険の基準が 5700円ですので、実に 5000円近い金額の差があるわけです。

このように、どのような計算方法を採用するかによって、主婦の休業損害の金額は変わってきます。

このことを知っておかなければ、保険会社から提案された金額をそのまま妥当なものとして受け入れて、低額な補償にとどまってしまうという可能性もあるのです。

なお、裁判所の基準を用いる場合には、全く家事ができなかった場合を100%として、割合的に休業損害を計算することが多くあります。

具体例をあげると、6か月間の治療期間のうち、最初の1か月を100%、次の2か月を50%、最後の3か月を30%というように、けがの家事への影響をパーセンテージで決定するという方法です。

具体例 この間の通院期間が15日、20日、30日であった場合

1万351円 × 100% × 15日1万351円 × 50% × 20日1万351円 × 30% × 30日35万1934円 となります。

休業日数は、通院期間と実通院日数を考慮して決定し、割合はけがの内容、程度、通院状況、家事への影響の度合いを考慮して決定していきます。

したがって、主婦の休業損害は裁判所の基準で計算すると、会社員と比べると、金額に幅が出てきます。

専業主婦の休業損害については、こちらでも詳しく解説しています。

 

兼業主婦の場合

主婦の中でも、パートなどで仕事もしているという、いわゆる兼業主婦の場合、休業損害の計算は、実際に得ている収入に応じて、変わってきます。

現実の収入が平均賃金以下の場合

この場合には、専業主婦と同じく、賃金センサスを用いて休業損害を計算します。

ただし、裁判所の基準で計算をする場合には、実際に仕事を休んでいるかどうかが考慮されることになります。

具体的には、仕事を休んでいないのであれば、家事にもそれほど影響はなかったのではないかという形で考慮されるということです。

 

現実の収入が平均賃金以上の場合

家事をしつつ正社員で働いている場合には、会社員と同じく、仕事を休んで給料が減少しているかどうかによって休業損害を計算することになります。

この点、正社員かつ主婦の場合、仕事もしつつ家事もしているわけですので、その分大変なわけで、どちらの休業損害も請求したいというように考える方もいらっしゃると思います。

しかしながら、交通事故の賠償実務ではこのような考え方は取られていませんので、あくまで主婦としての休業損害を請求するか、会社員としての休業損害を請求するかのどちらかになります。

 

 

主婦の休業損害の請求のポイント

家事をする主婦のイメージイラストここまで主婦の休業損害について解説してきましたが、主婦の休業損害を請求するにあたってポイントがあります。

それは、「どのような家事ができなかったかを記録しておく」ということです。

主婦の休業損害をめぐって、実際の事案では、交通事故により家事がどの程度できなかったのかという点で被害者と保険会社の間で認識の相違が生じます。

これは、家事が家の中でのことであり、保険会社をはじめとする第三者には実態が見えにくいという性質があるからです。

会社員であれば、会社を休んだ場合、休業損害証明書を作成してもらうことで給料が減少していることは容易に証明できますが、家事はお金が実際に発生している訳ではありませんので、状況を詳細に把握するのは難しいものです。

したがって、主婦の休業損害を適切に補償してもらうためには、事故によって、どのような家事がどの程度できなかったのか、時間の経過に従って、きちんとまとめ、保険会社を説得できるようにすることが大切です。

そのための方法の一つとしては、日記をつけるとよいでしょう。

日記をつけることで、保険会社との示談交渉のときに、あとで日記を見返すことができ、家事ができなかったことを詳細に伝えやすくなります。

また、家事代行サービスを利用した場合などでは、領収書をとっておくことも有益です。

そして、主婦の休業損害を交渉するに当たって、専門家である弁護士に依頼して保険会社と交渉してもらうことも積極的に検討しましょう。

 

兼業主婦が主婦としての休業損害が認められ、約45万円獲得した事例はこちらをどうぞ。

専業主婦が休業損害を160万円増額に成功した事例はこちらをどうぞ。

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