よくある相談Q&A

会社の取締役の場合は、交通事故にあっても休業損害は支払ってもらえないのでしょうか?


執筆者:弁護士 西村裕一

まず、会社の取締役と一言でいってもその態様は様々です。

いわゆる上場企業の取締役というケースもあれば、法人なりはしているものの、親族会社で、社員は身内だけでその中の一人が取締役というケースもあります。

したがって、一概に取締役=休業損害がでないというわけではありません。取締役が個人事業主と同視できる場合には、個人事業主と同じ考え方で休業損害を検討します。

それ以外のケースでは、取締役の性質に照らして判断がなされます。会社の取締役は雇用契約ではなく、会社との委任契約に基づいて経営業務を委任されており、役員の報酬はその対価になるものです。

そのため、役員報酬については、会社の利益配当の側面があるとされておいます。この部分は労務提供に対するものではないため、当該部分には休業損害は認められません。

他方で、役員報酬が労働の対価であると評価できる場合には、その部分について休業損害が認められることもあります。

休業損害とは

給料そもそも休業損害とは、交通事故による傷害のため、休業又は不十分な就労を余儀なくされ、減収した場合、その減収額を損害とするものです。

休業損害について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

役員報酬とは

会社の取締役等である会社役員は、雇用契約ではなく会社との委任契約に基づいて経営業務を委託されている人です。

一方、会社従業員(サラリーマンなど)は、雇用契約に基づいて労務を提供して対価として給与を得ています。

両者の違いの一つは、契約形態です。上記のとおり委任契約か労働契約かという点が違っています。

労働契約の場合には、ノーワークノーペイの原則により、働かなければ、その分給料が得られないという直接的な関係があります。

ところが、会社役員の報酬は、委任契約のため、労務の提供に対して、その対価として得るものでは必ずしもありません。

したがって、取締役の場合、直ちに休業によって収入がなくなる、収入が減少するということでは必ずしもありません。このため、休業損害は認められないという可能性があります。

裁判例も、会社役員の報酬には労務提供の対価部分としての報酬と利益配当の実質を有する報酬があり、利益配当部分については、役員としての地位にある限り休業をしても、原則として役員報酬金額に影響がないと考えられる(東京地判S61.5.27)として、休業損害を認めていません。

 

 

労務対価の判断

しかしながら、上記裁判例も指摘するとおり、役員報酬のうち、「労務提供の対価」と認められる部分には、休業損害は認められると考えられています。

具体的な労務提供の対価部分については、会社の規模(同族会社か否か)、利益状況、当該役員の地位・職務内容・年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給与の額の相違、事故後の当該役員及び他の役員の報酬の報酬額の推移、類似法人の役員の報酬の支給状況などを参考に判断します。

こうした判断には専門的な判断が必要になるため、税理士に決算書などを提出して、休業損害の調査を行うこともあります。

休業損害が認められる場合

被害者が会社役員であっても、その役員報酬がほぼ労務対価と判断される場合には休業損害が認められます。例えば、小規模法人の役員の場合です。

小規模法人の役員

小規模法人の場合、実質的に個人事業主(自営業者)と同視できます。そのため、休業損害の算定は、自営業と同じ取扱いをします。

前年度の確定申告書類に記載している売上から経費を差し引いた金額である所得金額をもとに算出します。

事故前年の確定申告書所得額より、1日当たりの基礎収入を算出します。

事案によっては、賃金センサスを用いて、休業損害を算出するケースもあります。

会社役員の休業損害のポイント

事故前の就労状況を保険会社にしっかり伝える

会社役員の休業損害については、労務提供の対価と評価できる部分がどこなのかという視点で検討しています。したがって、被害者の方がどのような仕事をどのようなシフトで行っているのか、それによって、月額の報酬がいくらであったのかを保険会社に説明しなければなりません。

単に、「仕事を休んでいるから」という説明では、会社員と違って、休業損害を認めてもらうのは困難です。

事故前の業務がどのようなもので、それが交通事故によって、どの程度できなくなったのか、そして役員報酬にどう影響しているのかという関係性をしっかりと押さえておく必要があります。

税理士による休業損害調査を受ける

会社員と違って、会社役員の休業損害は特殊な配慮が必要です。したがって、自営業者のケースと同じく、休業損害について専門家である税理士に依頼して、休業損害調査を受けるということも検討しなければなりません。

これは、相手方の保険会社の方で依頼をする場合もありますが、被害者の側で税理士に依頼して行うこともできます。

弁護士費用特約に加入していれば、こうした税理士による休業損害調査も特約の対象として費用を出してもらえることもあります。

したがって、弁護士費用特約に加入している場合には、弁護士に依頼して、連携業者による休業損害調査を受けることで、適切な休業損害を得られるようにサポートを受けることが大切です。

 

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