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「人身事故証明書入手不能理由書」とは?【弁護士解説】


掲載日:2018年10月22日|最終更新日:2019年8月15日

「人身事故証明書入手不能理由書」についての質問です。

「人身事故証明書入手不能理由書」についての質問です。

加害者の保険会社から「人身事故証明書入手不能理由書」を書いて提出してくれと言われました。

「人身事故証明書入手不能理由書」とは何ですか?

また、これを提出すると被害者である私が不利になることはありませんか?

弁護士西村裕一

人身事故証明書入手不能理由書とは、交通事故証明書のうち、人身事故の証明書が取得できない場合に作成することのある書類です。

基本的に「人身事故証明書入手不能理由書」を提出しても、それだけですぐに被害者が不利になることはありません。

ご質問のケースでは、示談終了後に相手方の保険会社が自賠責保険へ報告する際に提出するという可能性もあります。

ただし、けがをしているのであれば、交通事故にあってから早めに医療機関を受診し、診断書を作成してもらって警察署へ届け出ることを交通事故専門の弁護士としては勧めます。

「人身事故証明書入手不能理由書」とは

交通事故には、大きくわけて2種類あります。

それが物件事故人身事故です。

物件事故とは、車やバイクといった物が壊れた場合の事故のことです。

他方で、人身事故とは、人がけがをした場合の事故のことです。

警察に連絡をして事故処理を行うと交通事故証明書が作成されます。

この交通事故証明書に、物件事故か人身事故かを記入する項目があります。

そして、警察は被害者から病院の診断書を提出されると、人身事故として取扱いをします。

逆にいうと、診断書を警察に提出しなければ、被害者がけがをしていたとしても人身事故ではなく、物件事故として処理されることになります。

ここで、問題が生じます。

それは、物件事故の交通事故証明書では、けがの賠償を行う自賠責保険においては、そのままでは受け付けしてもらえないということです。

自賠責保険で受け付けてもらうために必要な書類が「人身事故証明書入手不能理由書」という書類です。

この書類は、人身事故の記載がある交通事故証明書を入手できなかった場合、入手できない理由を書いた上で、提出する書類です。

下図の書類が人身事故証明書入手不能理由書のサンプルです。

人身事故証明書入手不能理由書へ記入する事項

人身事故証明書入手不能理由書に記入する事項は、以下の内容です。

人身事故証明書入手不能理由書への記入事項

1 当事者の欄

2 氏名・住所・生年月日・車両番号・自賠責保険番号・事故時状態(運転か歩行か)

3 事故の発生日時

4 事故の発生場所

5 届出警察署・届出

6 人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない理由

・受傷が軽微で検査通院のみ(予定を含む)であったため
・受傷が軽微で短期間で治療を終了した(もしくは終了予定の)ため
・公道以外の場所(駐車場、私有地)で発生した事故のため

→ 6 については、該当する項目に◯をつけて記入をします。

警察へ事故を届け出ていても、大学構内や工場内、駐車場などでの事故の場合は交通事故証明書がそもそも発行されないこともあります。

その場合には、「公道以外の場所で発生した事故のため」に○をつけることになります。

※なお、物損事故の交通事故証明書が発行されている場合には、1ないし4の記載は省略できます。

 

 

人身事故証明書入手不能理由書が必要になるタイミング

こうした人身事故証明書入手不能理由書が必要になるタイミングとしては、以下の2つが考えられます。

  • 被害者の側で自賠責保険へ請求を行うとき(被害者請求)
  • 保険会社の側で自賠責保険へ請求を行うとき

このうち、保険会社の側で自賠責保険へ請求を行う場合、被害者との示談終了後に行うケースがあります。

これは、保険会社が示談成立後に自賠責保険からお金を回収するために行うもので、被害者の方が人身事故証明書入手不能理由書を提出しても、保険会社同士の処理を行うだけですので、特に影響はありません。

 

 

人身事故証明書入手不能理由書のリスク

他方で、人身事故証明書入手不能理由書の記載には、以下の項目があります。

  • 受傷が軽微で検査通院のみ(予定を含む)であったため
  • 受傷が軽微で短期間で治療を終了した(もしくは終了予定の)ため

つまり、人身事故として届け出ていないということは、被害者の方自身が、けががそれほど大きくないと考えていたと捉えられてしまう可能性があります。

そうすると、以下のようなリスクが生じてしまいます。

リスク ① 保険会社の治療の打ち切りが相対的に早くなる

リスク ② 後遺障害の認定可能性が低くなる

したがって、けがをしている場合には、早めに医療機関を受診し、診断書を警察署へ提出しなければなりません。

交通事故の発生から2週間以内には、診断書を提出しておくのが無難です。

病院が診断書の作成に時間がかかるという場合であれば、あらかじめその旨を警察署に連絡しておく必要があります。

この点、警察に診断書を提出すると、加害者は刑事上、自動車運転過失致傷罪が問われる可能性があり、行政上も運転免許の点数が減点される可能性もあります。

そのため、加害者の保険会社から被害者の方に、「物件事故のままでも治療費の対応はするので、診断書は警察に出さなくてもいいですよ。」と説明されることがあります。

しかしながら、この保険会社の説明どおりに、診断書を警察に提出しなかった場合、上述のとおり、保険会社から治療の打ち切りを受けた場合に被害者のほうが不利益を被る可能性があるだけでなく、後遺障害も認定されない可能性が高まるなどのリスクがあります。

不利益が生じた段階で後から診断書を警察に提出しようと思っても、警察はすでに事故処理を終えていて受理してもらえません。

したがって、けがをしているのであれば、人身事故として届出をしておくことが被害者としては必要といえ、安易に保険会社の説明を鵜呑みにしないように注意しなければなりません。

 

 

まとめ

弁護士西村裕一交通事故は突然発生します。

そのときの初期対応によって、その後に大きな影響が生じることもあります。

その一つが、今回解説した人身事故証明書入手不能理由書です。

初めてのことで不安や心配事が多いのが通常ですので、初期対応に困ったら専門家である弁護士にも相談して対応していくことも検討すべきでしょう。

▼事故直後の方へのサポートについて、詳しくはこちらをご覧ください。

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