よくある相談Q&A

交通事故の際の保険はどうなっていますか?


弁護士西村裕一自動車保険には、自賠法で加入が義務づけられている自賠責保険(強制保険)と任意に加入する自動車保険(任意保険)の2つの保険があります。

自賠責保険は、対人(ヒト)事故にみ適用される保険です。

一方、自動車保険は、ヒトに対する補償とモノに対する補償があります。

 

自賠責保険の概要

保険自賠責保険の特徴は、自動車の運行によって人の生命又は身体が害された場合に対して、法令に基づいて支払われる保険です。

自賠責保険では、「傷害」、「後遺障害」、「死亡」の3種類があります。

交通事故の際に加害者の賠償責任の法的根拠の一つとなる民法の不法行為責任(民法709条)においては、被害者は加害者に責任があるということを立証する必要があります。

しかし、自賠責保険では、被害者救済という観点からこの原則が修正されています。

具体的には、被害者は自動車の運行により被害者が死傷したことを立証すれば足り、加害者の方が、以下の全て(免責3要件)を立証できない限り責任を免れません。

免責3要件
  1. 自己及び運転者が自動車の運行に注意を怠らなかったこと
  2. 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
  3. 自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

この免責の主張はかなりハードルが高いため、実質無過失責任ともいわれるものです。それだけ、自賠責保険は被害者救済に着目した保険というわけです。

自賠責保険における損害の補償についてですが、傷害の場合は治療費・文書料・休業損害・慰謝料等が支払われます。この傷害の限度額については、120万円となっています。

後遺障害の場合は、逸失利益・慰謝料等が認定された等級に応じて支払われます。限度額は14級の75万円~別表1の1級1号の4000万円まで設定されています。

また、死亡の場合は、葬儀費・逸失利益・慰謝料で限度額は3000万円となっています。自賠責保険会社は、国土交通大臣・内閣総理大臣により定める基準によって、上記限度額の範囲で支払います。

例えば、傷害事故の場合、主婦(家事従事者)の休業損害は日額5700円、慰謝料は通院1日につき4200円となっております。

後遺障害の慰謝料は、14級の場合は32万円、死亡の慰謝料は死亡本人には350万円、親族の慰謝料は請求権者が1人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円、なお、亡くなった被害者に扶養者がいる場合は200万円が加算されます。

したがって、死亡事故の場合の慰謝料は、最大で1300万円となります。

このように、自賠責保険では、支払金額に明確な定めがありますが、これは強制保険という性質上最低限度の補償という位置付けです。

したがって、弁護士が交通事故の示談交渉に用いている裁判基準での賠償額に比べれば、自賠責保険の金額だけで十分な補償を受けることは困難なことが多いです。

自賠責保険について、その他の特徴としては、保険会社の示談交渉サービスはありません。

つまり、交通事故にあった際に連絡をしてくる保険会社は、自賠責保険ではなく、任意保険の保険会社であるということです。

相談そこで、被害者の方が直接加害者の自賠責保険から賠償を受けたい場合には、直接請求(自賠法16条)といって、必要書類を送付する方法を取らなければなりません。

また、自賠責保険では、不法行為の場合に適用される過失相殺(民法722条2項)は厳密に適用されません。これも被害者救済が目的の自賠責保険ならでは特徴です。

もっとも、被害者の過失が70%以上あると判断される場合は下図のとおり、一定の減額があります。

図 自賠責保険(共済)の減額率

被害者の過失割合 減額割合
後遺障害または死亡 傷害
7割未満 減額なし 減額なし
7割以上8割未満 2割減額 2割減額
8割以上9割未満 3割減額
9割以上10割未満 5割減額

自賠責保険の調査は、損害保険料率機構という組織の自賠責損害調査事務所が行いますが、先ほどの図の重過失減額の調査対象案件では、当事者双方から事故状況を調査したり、現場の調査、刑事記録による調査等を行います。

したがって、通常の案件に比べて調査に時間を要することとなります。

交通事故証明書の「甲欄」に被害者が記載されている場合には、基本的に調査対象案件となりますので注意が必要です。

 

 

自動車保険(任意保険)の概要

自賠責保険の補償は最低限のものですので、治療費が120万円以上かかったりした場合、自賠責保険の限度額を上回ることがでてきます。

また、慰謝料が120万円でおさまっていたとしても、慰謝料や休業損害を含めるとやはり120万円を上回るということもあります。このとき、加害者は当然その支払義務を負うことになります。

こうした交通事故による賠償リスクを補うために加入する保険が、自動車保険(任意保険)と呼ばれるものです。

「対人無制限」、「対物無制限」というのは、自賠責保険ではなく、自動車保険の概念になります。多くの保険会社がCMをして、「示談代行サービス」などを案内しているのも、この自動車保険の方になります。

車自動車保険は、以下のような種類の保険が主なもので、それを組み合わせて一つの保険契約を締結しています。

平成10年7月より、自動車保険は自由化により、各社独自の商品を発売しています。そのため、ご自分がどのような内容の保険に加入しているかは、保険証券をしっかりと確認することが大切です。

特に、交通事故に関する相談を弁護士が受けていると、弁護士費用特約をつけていることを知らなかったという被害者の方がよくいらっしゃいます。

これを機会に一度ご自身の保険内容をチェックして、備えとして十分であるかを見てみましょう。

対人賠償保険

他のヒトにケガ・後遺障害・死亡させた場合に適用される。

自損事故保険

運転者が単独で電柱に衝突した場合など、自賠責保険では、支払がされない場合に、ヒトに定額の保険金が支払われる。

無保険車傷害保険

交通事故の相手が任意保険等に加入していない場合に、自分側の保険より、後遺障害・死亡事案(ヒト)に対して、損害賠償に相当する保険金が支払われる。

搭乗者傷害保険

自動車の運行に起因する事故によりヒトに傷害を被った場合に定額的な保険金が支払われる。見舞金とよく呼ばれている保険。

対物賠償保険

他の車等に損害を与えた場合に、モノに対する損害賠償金が支払われる。

車両保険

自分の車に損害が発生した場合、修理費なが補償されるモノ保険。

人身傷害保険

自分がケガ・後遺障害・死亡した場合に、加入保険会社の支払基準によって、保険金が支払われる。

弁護士費用特約

自分が相手より損害を受け、相手に対して請求を行うために、弁護士等に相談、交渉依頼した費用が自分側の保険より支払われる保険。

 

 

対人賠償保険・対物賠償保険の適用

保険対人賠償保険、対物賠償保険が適用されるのは、被保険自動車の「所有、使用または管理に起因して」、相手(被害者)に損害賠償責任を負担しなければならない場合に対象となります。

例えば、以下のような事例を考えてみます。

具体例

停止中の自動車に他人を乗車させる際に、運転者が案内して、ドアを閉めるときに乗車しようとしている人の手を挟んで、ケガをさせてしまった。


この場合、自賠責保険では、停止中ですので、運行には該当しないという判断になる可能性があります。

もっとも、運転手は民法上の不法行為責任を負うことは明らかです。そこで、対人賠償保険では、「所有、使用または管理に起因して」と運行だけに限定していません。

そのため、このケースでは、自動車車保険の対人賠償保険は支払対象の事故となります。

対物損害賠償保険では、
①対物事故(被保険者自動車の所有または管理に起因して他人の財物を滅失、破損または汚損すること)が生じること
②前記①に起因して被保険者が、法律上の損害賠償責任を負担することが必要となった場合に支払われます。

このように、交通事故の場合には、自賠責保険と任意保険(自動車保険)という2つの保険の適用が問題となります。

ただし、具体的な保険の内容については、非常に細かいので、しっかりと事案に応じた検討をしなければなりません。

当事務所には、長年損害保険会社で賠償交渉の担当をしていた交通事故専門の担当スタッフが在籍しています。お気軽ににご相談ください。

 

 

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