よくある相談Q&A

加害者が任意保険に加入していない場合に使える保険はある?


保険についての質問です。

加害者が任意保険に加入していない場合、自賠責保険以外で何か使える保険は何かありませんか?


加害者の任意保険未加入の場合に適用できる保険について、弁護士がご回答いたします。

加害者が任意保険に加入していない場合、被害者が自分の加入している自動車保険に、人身傷害保険が付保されている場合は、この保険が使用できます。

この保険は、「全ての人身事故:保険加入の車だけでなく、他人の車両に乗車中や歩行中の受傷」と「搭乗中のみ担保:保険契約している車両に乗車中の受傷のみ」と大きく2つがあります。

また、後遺障害・死亡の場合は、無保険車傷害保険があります。

人身傷害保険は、加害者が保険加入にていない場合のみならず、保険加入している場合にも支払を受けられます。各保険会社により、約款が異なります。

 

加害者が任意保険に加入していない場合の原則

加害者が任意保険に加入していない場合、治療費などその都度発生する費用については、保険会社による治療費の支払いがないため、原則として、被害者の方が立て替えざるを得ないことになります。

そして、被害者の方が直接支払った治療費などの明細書の作成を病院にお願いして、自賠責保険に被害者請求をするという流れになります。

自賠責保険の限度額はけがの場合、120万円までですので、これを上回る費用が発生した場合、加害者に対して直接損害賠償を請求することになります。

しかし、この方法は被害者の方にとって金銭的にも被害者請求をするという点でも負担が大きくなります。

そこで、加害者の自賠責保険以外に何か使える保険がないかという考えが出てきます。

 

 

人身傷害保険

人身傷害保険は、現在の東京海上日動火災保険による2年間の研究の末、平成10年10月に発売された新しい保険です。

それまでの自動車保険は、交通事故を起こした場合(加害者になった場合)への補償という側面が強かったのですが、この人身傷害保険は、保険料を支払う契約者が最大の受益者となるようにという異なる視点で設計された保険です。

その後、この保険が発売されたのち、他の自動車保険会社も同様の考え方に基づいて次々に人身傷害保険を用意するようになり、現在では、ほぼ全ての保険会社がこの保険を販売しており、中には自動車保険に自動的に付帯されているものもあります。

人身傷害保険の付保率は、2017年3月末の時点で全国平均68.7%となっています。

 

人身傷害保険の特徴

人身傷害保険の特徴は、人的損害をそれまでの「賠償責任保険」という視点から「傷害保険」の視点により捉え直したことにあります。

すなわち、損害保険としては、あくまで加害者が賠償義務を負う範囲での保険金の支払いとなりますが、生命保険の要素を取り入れて、けがに対して、あらかじめ保険会社が定めた基準で保険金を支払うという形です。

そのため、人身傷害保険は、対人賠償保険と違って、加害者との交渉が不要になります。また、この保険を使用しても等級が下がることはありません。

したがって、設例のように加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者の賠償能力に問題があることが多い(任意保険の保険料の支払いができない、したくないので加入していないことが多い)ので、加害者が補償をしてくれるかわからず、治療を満足にできないといった事態が生じるのを避けるために、人身傷害保険を利用することを積極的に検討すべきです。

ただし、人身傷害保険はあくまで保険会社の約款に基づいて支払額を決定するのが原則ですので、交通事故の際に弁護士が示談交渉の基本とする裁判所の基準に基づく計算で支給を受けられるわけでは必ずしもありません。

図 人身傷害保険の基本構造

  1. 各保険会社の約款により所定の算定基準により保険金が支払われます。支払保険金の項目は、損害賠償保険の項目に準じています。
  2. 加害者の自賠責保険金や損害賠償金等のすでに支払われた賠償金額険等がある場合はその金額は控除されます。
  3. 人身傷害保険の支払いにより保険会社が被害者の損害賠償権を代位取得します。(保険会社が被害者へ支払った後に、加害者の責任に応じた金額を加害者へ請求します。)
  4. この保険を使用しても等級に影響はないため、保険料は変わりません。

 

人身傷害保険の請求・支払パターン

上図が人身傷害保険の基本的な構造になりますが、この保険は使い方によっては、すごく便利な保険です。

すなわち、追突事故のように10:0の事故ではなく、被害者に一定の過失がある交通事故で、その被害者の過失部分を人身傷害保険でまかなうことができる可能性があります。

以下では、まず、人身傷害保険の支払パターンについて、みていきます。

人身傷害保険先行払い

加害者に賠償請求する前に自分の契約する保険会社へ人身傷害保険を全額請求する方法です。
当初はこの方法を保険会社は強調して販売を開始しました。
設例の事案でもこの方法により支払いを受けることになります。

過失相当分先行払い

先に被害者と人身傷害保険会社で過失割合等について協定した上で、加害者過失分を除いた額で先行払いする方法です。
もっとも、実際にはあまり利用されていません。

加害者の賠償先行払い

加害者より損害賠償額を受領後、改めて人身傷害保険会社に対して人身傷害保険の算定額と賠償額との差額を請求する方法です。

保険会社の商品開発担当者は、人身傷害保険先行払いの利用を期待していましたが、実際にはの加害者の賠償先行払いによる賠償金との差額払いが多いのが実情です。

その理由としては、交通事故の被害者が自分の保険を使用するという考えがあまりないためです。

実際的には、等級が下がったりしないのですが、被害者の意識として、まず加害者が支払うべきだという意識がどうしても働いてしまいます。

 

 

人身傷害保険の上手な使い方と弁護士の活用

近年、保険会社は人身傷害保険の約款を変更してきました。

具体的には、判決や裁判上の和解がある事案の場合、人身傷害保険の支払額を保険会社の定める基準から裁判所の算出した額へ引き上げると約款に記載する保険会社が多くなっています。

この約款変更は人身傷害保険をめぐる平成24年の最高裁判所の判決が影響をしているのですが、この規定を活かすことができれば、交通事故により被害者に生じた損害が500万円、被害者に過失が2割あった場合に被害者側の過失部分の100万円(500万円×20%)をまかなうことができる可能性があります。

ただし、こうした約款を理解して使いこなすのは、交通事故に専門特化した弁護士に依頼することをおすすめします。

なぜなら、各保険会社によって、それぞれ約款が微妙に異なっているだけでなく、いつの契約かによっても保険会社が常時約款を見直しているため、非常に高い専門性が要求されるからです。

したがって、約款をきちんと確認して、事案に応じて人身傷害保険の使用する順番(人身傷害保険を先に受領するのか、加害者の賠償金を先に請求するのか)や解決方法(示談で解決してもよいのか、訴訟提起する必要があるのか)を事前に検討しておく必要があります。

実際に人身傷害保険を活用して被害者の方に多くの賠償金(保険金)が得られた事例もございます。詳しくは、弁護士にご相談ください。

 

 


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